片貝医院

 

手作りマスクの作り方

マスクの限界と使い方


普段から医療機関の入り口に、風邪でくしゃみや鼻水や咳が出る人には、マスクを装着して下さいと、
掲示されているのを目にされる方は少なくないと思います。
通常のインフルエンザの季節には、罹ったかな?と思って受診される方は、マスクをして来られる方が大半で、
たまに「手元になくて」してこられなかった方には窓口でお渡ししていました。

マスクの目的は本来「くしゃみや鼻水や咳がある方が周囲に飛沫を撒き散らさない」、
つまり「大きな飛沫をトラップして感染を拡げることを防ぐ(減らす)」ということです。
付けた人をウイルス感染から守る程の効果は期待できない、という意見が大半です。
(一定の効果はある、とする意見もありますので何の効力もないとまでは言えませんが)
医者は、診察時にマスクを外してもらった方から直にくしゃみや咳で飛沫を浴びることもあり、
自分のマスクは直接的な防御となっていますが、そんな状況は一般にはあまりないでしょう。
鼻粘膜や喉の粘膜を保湿して乾燥しにくくするなどの間接的な効果は、研究があまりなく、
経験的に、冬の乾燥した時期にはウイルス感染しにくくなる様には思いますが、
医学的に証明されたかどうか私は良く知りません(ご存じの方、お教え下さい)。

現在の「マスク不足」は様々な現象が絡んでこうなったのだと思っていますが、困ったのは、
本来マスクを付けてもらうべき症状のある方の分さえ医療機関でも確保しづらくなったことです。
マスクを必要な方に適切に装着していただくことが、社会全体への対策になると考えられていること、
手洗いや、目や鼻や口などへ手を持って行かないこと、
必要もなく人の大勢集まる場所に行くことを避けること、などがまず優先されると思いますので、
そのあたりをご理解いただきたいと我々は思っています。

今回の「手作りマスク」がこれほど反響を呼ぶとは思っておりませんでした。
集団心理は冷静な判断を妨げ、事態をさらに悪化させることが知られています。
あの「見てくれの悪いマスク」が、混乱を収める一助になったと思えば本望です。
また、マスコミが取り上げてくれたことで、マスクの本来の使い方を広め、
手洗いや、目・鼻・口に手をやらないこと、などの大切さを広めていただけたことは、
とても良かったと思います。

今は穏和なウイルスですので騒ぐことはありませんが、この先どう展開するかわかっていませんので、
万一今より深刻になって、外出を控える様にならないとは限りません。
今後マスコミの方々のお仕事は、とても重要な役割を持ってくると思われます。
「手作りマスク」の件で、正しい予防対策の一環で正しいマスクの使い方を広めていただいて、
関係者はとても有り難く感じているでしょう。
感染地の医療機関や町でなにが問題になっているのかを適切に拾い上げていただいて、
ではどうすれば良いだろうと皆が協力して考え、不安を安心に繋げ、
新型インフルエンザ対策を良く理解していただく、といったマスコミ本来の役割に、
今後も強く期待している次第です。


ペーパーマスクが公開に至った経緯



中越地震という災害を経験してからというもの、
使い慣れた物資の供給が滞る中、身近にあるものを利用して急場をしのぐ事がありました。
5月16日に開かれた近くの医師の集まりで、マスクが入手困難になっていることを聞きました。
「買えなくなったらどうなるんでしょうね?」と話題を振られた私は即、
「そうなったらガーゼでもさらしでも使ってマスクを作るしかないでしょう?」
と、作ったことはないけれど、当然の事の様に答えました。
翌17日、ある医療系のメーリングリストで実際に新型インフルエンザの発生地で診療する医師から、
マスクが底をつき始めたが、国は何か対策をとってくれるのだろうか?という発言があり、
自分としても危機感をつのらせ、いざという時のために作ってみなくてはと思い立ったのです。

今回のマスク作りで始めから私が重視した条件は、
  1.身近な場所で手に入りやすい生活素材で流通量も多く長期的にも供給が見込める
  2.子どもやご老人でも楽しく簡単に作れるローテク構造
  3.1日に何度もマスクを惜しげなく使い捨てにできる
  4.廃棄時には焼却処分が望ましい
でした。

時間ができたのは既に日曜日の夜でしたので、家にある使えそうな素材を思い浮かべてみると、
古着・ガーゼハンカチ・ストッキング・ティシュペーパー・ペーパータオル(キッチンペーパー)
これらを適当な大きさに切って紐をつけたり、ストッキングなら中に何か詰めたりすれば、
何とかなるかも、とは思ったのですが、
もっとも簡単に加工できそうなのは、ペーパータオルだと思えたのです。

折りたたんで紐を縫い付けようとか、切り込みをいれて耳にひっかけようとか、
ちょっとだけ試してみたのですが、複雑だったり切れ目が弱かったりでボツ。
そのうち、子どもの遊びで出しっぱなしだった輪ゴムをホッチキスで止めればとひらめきました。
うまいことに、わが家のペーパータオルの巾は輪ゴムを付けるとちょうど耳にかけられるサイズで、
ここで、上手く行きそうな予感がしてきました。

あとは、サージカルマスクのように折りたたんでフィットさせれば良さそうだと思い、
何度か折り方を変えて試してみましたが、
もっともシンプルで作り方の説明がしやすく、フィット感もまずまずの現在の形ができました。
早速子ども達に「一緒に作ろ!」と声をかけて作らせてみましたら、
幼児でも一発で作り方を憶えて作れるではありませんか!
休校や休園になった子ども達にたくさん作ってもらえれば、お父さんやお母さんも助かるでしょう。
マスクを嫌がりやすい小さなお子さんも、シールやお絵かきで飾ればつけてくれそうです。

作りながら写真を撮り、加工してホームページにUPするまで約2時間。マスク作りに没頭しました。
なによりもまず、前述のマスクが底を付き始めた医療機関に伝わるようにと情報を流しました。
ついで、所属しているメーリングリストに順次、マスクの情報を流したのですが、
その頃から少数ですが反響がありました。
医療機関や薬局に、マスクが店に置いてないので譲ってもらえないかと来られた方に、
これまではお渡しできずにお詫びするだけだったのを、作り方をコピーして渡してあげたら、
とても喜ばれたというような話が多かったです。


どこから知ったのか、そのうちにテレビや新聞や雑誌の電話取材が始まりました。
その時、作った理由・このマスクの性能などについて同じ様なことを聞かれるので、
他の一般の方々も知りたいと思っていらっしゃるのだろうと考えまして、
このページを併設いたしました。

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