片貝医院

2007/02 HPリニューアルしました(^_^;)

zina
        映画 「紅の豚」 から”ジーナの飛行艇 ”
 宮ア駿氏のアニメーション「紅の豚」には実に多くの魅力的な飛行艇が
登場します。中でもヒロイン・ジーナの乗る飛行艇は基本色が白で複葉機
であることから紙飛行機としての美しさを表現するのに絶好の機体です。
ただ、原作通りだと構造的に弱いので支柱を太くして丈夫に作るなどの工
夫や、高翼の複葉機は揚力の中心が重心位置より高くなるので迎え角を
抑えたり水平尾翼面積を大きく設計したりするなどの調整が必要です。


meve
      大空に舞う 「風の谷のナウシカ ”メーヴェ ”」
 宮ア駿氏の「風の谷のナウシカ  第1巻」 から初期の ”メーヴェ ”の
設計図を引いてみました。いわゆる無尾翼型で翼の後退した部分が水平
尾翼の機能を持っています。さらに原作通りに翼端に下反角をつけ、側方
投影面積を工夫して方向安定を確保しました。機首がほとんどないので、
重心位置の調整に多量のバラストが必要となり、翼面荷重値が増大してし
まい、アニメーションのような軽快な飛行ではなく重々しい飛行です。


vtol
      「ウルトラマン」 から ”ジェット・ビートル ”
 科学特捜隊のジェット・ビートル機です。このハイドロジェネート・ロケット
エンジンを搭載した特殊ビートル機は、バルタン星人に襲われたロケット
「おおとり」を救助するために、大気圏外に飛び立つ際に登場しました。
その勇姿と飛行機としての機能美には子供ながらに感動し、今でも脳裏に
焼き付いています。その勇姿を紙飛行機として再現しました。先尾翼型で
すが、原作のデザインが航空力学から逸脱していないので設計は簡単です。


meve
         境界層隔離板つき超音速ジェット機
 子供の科学誌1974年11月号に二宮康明先生が発表した超音速ジェット機は、翼
がすべて直線で構成された秀逸なデザインの機体です。後退翼なので翼端失速を
起こしやすく、頻繁にスパイラル・ダイブに入りました。水平尾翼の後縁をわずかに
下げることで対処しましたが、むしろ小さな模型でも航空力学の理論通りの動きを
見せることに興味を持ちました。写真の機体は(効果があるかどうかは不明ですが)
境界層隔離板をつけて翼端失速の発生を抑制してみました。


meve
    設計図展開の妙1 吉田辰男氏 「サーマル・キャッチャー」
 子供の科学誌1974年12月号に発表された機体です。3面の平面で構成
されたキャンバーが主翼取り付け部にも維持されています。胴体が長く B5
版に入らないためか、前後2分割の設計になっていますが、ここでは強度を
考慮して通常の方法としました。20余年前に作成したものです。「できるだけ
高く上がって、サーマル(熱上昇気流のこと)をとらえやすいように設計した
機体です。」 とある通り、当時としては上昇性能は抜群でした。


meve
    設計図展開の妙2 二宮康明氏 「二段上反角つき競技用機」
 子供の科学誌1975年8月号に発表された機体です。バルサ製のHLGの連載
が好評な中、紙飛行機として初めて二段上反角を取り入れた機体であると記憶
しています。翼端上反角部にまでキャンバーを確保したこの設計図展開と二宮
先生の並々ならぬ独創性と熱意には感動しました。この手法は後に主翼中央部
にまで応用されMOSTウィングとして高性能競技用機の定番となっていきます。
なお、当時は翼端のパーツの方に二段上反角ののりしろがありました。


meve
         趣味の範囲を遙かに超越した 「文化」
 二宮康明先生設計のホワイト・ウィングスです。MOSTウィング・二段上
反角・美しい翼の曲線・強度を維持しながらも極限まで細められた胴体・飛行
性能。どこを見ても完璧なまでに完成された機体だと思っています。ここまで
到達すると、もはや「文化」です。せっかくの「文化」ですから、できれば子供達
には打ち抜かれたパーツを接着するだけでなく、丁寧にカッターやはさみで
曲線を切り出すところから、工作技術として伝えたいと思います。


meve
       吉田辰男氏 垂直上昇 滞空競技用機 K8212
 昭和58年の学生の頃、武蔵野中央公園を訪れたところ、吉田辰男先生が「こんな
ものも作ってみて下さい。」 と2枚の型紙を下さいました。それがこのK8212でした。
私にとってはほとんど初めて見る垂直上昇パターンで、赤い翼端と主翼中央部の吉田
先生のマークとも相まって圧倒的な存在感を持っていました。医師になって何年かして
から再び同地を訪れた時、吉田先生には二度とお会いすることができなくなっていたことを
知り目頭が熱くなりました。現在では紙が黄ばんで一部損傷していますが、「宝物」 です。


meve
       二宮康明先生御夫妻の 「 80 + 80 二人展」 から競技用機
 第1回国際紙飛行機大会でグランプリを受賞した競技用機とトロフィーだそうです。
この機体については子供の科学誌1997年10月号で「当時はガスコンロの火で翼端を
あぶって上反角をつけていたのでこの部分には最適なキャンバーがつけられない欠点
がありました。」 と回想されています。が、有機的な美しさを持ったこの機体の登場
が日本の紙飛行機文化の幕開けになったような気がします。重心が翼弦の25%で
水平尾翼が小さく、調整が難しい機体です。(写真掲載:二宮先生の許可を得ています。)


meve
         吉田辰男先生の熱き想いを乗せた 「白い小さな翼」
 吉田先生は、子供の科学誌1980年6月号に発表した 「飛鳥」 をもとに 5年間にわたり
改良・熟成を行い、第2回国際紙飛行機大会滞空部門で世界の頂点に立ちました。本機
は大塚薬報(1988年)や「紙ヒコーキで知る飛行の原理」(講談社)に写真が掲載されてい
ますが、@極めて細い胴体、A尾翼の位置関係と取り付け法、B翼端にもついたゆるい上
反角に明らかな 「飛鳥」 との差異があります。非常に美しい機体です。


meve
         第2回国際紙飛行機大会滞空部門第2位入賞機
 吉田辰男先生の設計です。こちらの方は競技用紙飛行機集や高性能紙飛行機集
( いずれも誠文堂新光社 発行)に収録されている 「チャレンジャーC」 そのままの
ようです。ほとんど直線で構成されていますが、特徴のある翼形を主翼・水平尾翼・
垂直尾翼に使用していますのでシンプルな中にも統一性を持った美しさがあります。
ちなみに競技用機として、チャレンジャーA (子科 '74年2月号)、チャレンジャーB
(子科 '77年4月号) も発表されていますので、機会があれば追って御紹介致します。


meve
        二宮康明氏 競技用機526 キングフィッシャー
 最近は武蔵野中央公園に行く機会がなく、競技会にも出場しないので滞空競技
にどのような機体が主流で使用されているのかが全くわかりません。後退翼 ・ 双
垂直尾翼の組み合わせの機体が上昇がよいと聞きました。競技用機は徐々に主翼
取り付け角が0度に近づき、重心位置が後退していきました。沈下速度性能より
上昇性能が良い方が楽しいとは思います。このような変遷を見ていくのも紙飛行
機の楽しみの1つです。


meve
        吉田辰男氏  ロケットグライダー  RGX−1
 子供の科学誌1975年12月号に発表された機体です。私は航空学が専門ではない
のでロケット・グライダーという概念のものが存在するかはわかりませんが、当時、
中学1年生だった私には理屈抜きに夢を感じる紙飛行機という印象がありました。
主翼は中心線から10mm 程の所から上反角が付いていて機尾側が機首側に比して
広く折り上げられる関係で主翼取り付け角を持っています。吉田先生は垂直に立てて
置ける機体が好きで、子供の科学誌1973年5月号 「バードマン」にも見られます。


meve
        吉田辰男氏 何とも楽しい 「カラスの9ちゃん」
 5分でできるミニ紙飛行機集(誠文堂新光社)に収録されている機体です。子供
に作ってあげると大喜びです。「自分で手を動かしてものを作ること」 「なぜ、飛ぶ
のかを考えること」 「翼をどのように動かすとどのように飛び方が変わるのかを
観察すること」・・・様々なことを子供に教えられる科学教材です。それもホチキス
やセロファンテープで簡単に作れるのであれば素晴らしいことです。ここに収録さ
れている機体は 「吉田式切り折り紙飛行機」 と呼ばれ、広く親しまれています。


meve
         「吉田式切り折り紙飛行機」 のルーツをさぐる
 現在の「吉田式切り折り紙飛行機」 の原点を子供の科学誌1974年1月号に発表
された「ミニレーシングプレーン ワン・ツー・スリー号」 に見ることができます。機首を
折り込んで胴体とバラストを構成する点、尾翼部分を中心線に対して機首側をせまく
機尾側を広く折り下げることによって負の取り付け角を設け、機体全体として前翼に
揚力を発生させる手法を採っている点がそうです。本機では、機首の折り込み部分に
曲線が残っていて折り込み法も現在の方式には至っていません。


meve
       「吉田式切り折り紙飛行機」 の誕生 「ひよっこ号」
 子供の科学誌1974年6月号に発表された機体です。二宮康明先生の「白い紙の美しさ
を大切にするという哲学」 のもとに設計された機体を作り慣れた私にとっては、あまりにも
奇抜で大胆なデザインであり、しばらくは 「紙飛行機」 として受け入れられませんでした。
もちろん、現在ではこの機体の楽しさは十分に理解できます。ところで私はこの手の機体も
接着剤で作成します。すると、簡単に作成できる点よりも 「尾翼下反角型」 の応用が紙
飛行機としてのデザインの幅を広げる点に大きな意義を見いだしていくことになります。


meve
        尾翼下反角型紙飛行機の意義と例  「改変型かもめ」
 この 「尾翼下反角型」 は翼の形を自由にデザインしたり、翼面に drawing を施したり
することで様々な夢の飛行機を作ることを可能にしました。鳥や昆虫のように実際に飛ぶ
ものから、魚、抽象物にいたるまで紙飛行機として飛ばすことができます。写真は子供の
科学誌1975年6月号に吉田辰男氏が発表した 「かもめ」 を一部改変して作成したもので
す。 ( 自在に曲線を切り出せる 「紙」の利点を生かすために曲線部分を増やしました。)
本機は胴体のプロフィールも 「かもめ」 をデザインした「尾翼下反角型」 の傑作です。


meve
        尾翼下反角型紙飛行機の例 2  「ウチワヤンマ」
 「ウチワヤンマ」 は尾の先端近くにウチワ状の構造物を持つトンボです。この部分
を垂直尾翼に見立てることができるので、「 尾翼下反角型紙飛行機 」 のモデルとして
最適です。航空力学的には、前翅に取り付け角が付くように上反角を持たせ 揚力の
発生と横安定を、重心位置をかなり前方の前翅翼弦50%に置くことで後翅に水平尾翼
としての縦安定を、ウチワの部分に方向安定を担わせました。重心位置からの距離と
翼面積の関係が力学的モーメントの面からも好都合なモデルでした。


meve
        尾翼下反角型紙飛行機の例 3  「チョウ」
 左 「モンシロチョウ」 、右 「キベリタテハ」 。翼面に drawing を施して作成した
ものです。右は捕虫網を持った少年の心拍数を最も上げるチョウでしょう。使用
するケント紙の厚みや胴体の太さ、貼り合わせ枚数といったパーツ構成を両者間
で変えることで翼面荷重値に違いを持たせてあります。よって、「モンシロチョウ」
はゆっくりふわふわと、「キベリタテハ」 はタテハチョウらしくスピードのある滑空
をします。実物のイメージに合わせて飛び方も調整することができます。


meve
          尾翼下反角型紙飛行機の例 4  「トビエイ」
 「トビエイ」 は水族館で女性に人気があるそうです。その 「トビエイ」 を紙飛行機
としてデザインしました。実際は背ビレの部分はもっと小さいのですが、そのままでは
垂直尾翼面積が十分に取れず、方向安定を確保できません。いくら形が実物に忠実
であっても、形が奇抜で面白くても、あるいは美しくても、夢やデザインだけが先行して
機体が航空力学という物理学の理論から離れてしまっては飛ばすことはできないので
す。この 「変更」 を加えるところも紙飛行機設計の楽しいところです。


meve
         尾翼下反角型紙飛行機の例 5  「 流星 」
平成18年の夏休みに中越地方で 「大地の芸術祭」 が開催され、家族5人で3日
かけて見てきました。その晩にペルセウス座の流星群が見えるというので宿の方
に好ポイントに連れて行ってもらいました。ピークを1日過ぎていましたので、1時
間に数個しか見えませんでしたが、子供達は感激したようです。長女の夏休みの
自由研究が 「 ヒコーキはなぜ飛ぶか 」 でしたので、帰宅してからその応用編と
して 「流星」 をイメージした機体を一緒に作ってみました。


meve
         尾翼下反角型紙飛行機の例 6  「樹枝状六花」
 子どもの頃に住んでいた長野県では雪はきれいな六角形でした。ここ新潟県
小千谷市では冬はいつもどんよりと曇っていて、過冷却された雲粒の間を通っ
て来るためか、あられや雪片 (ぼたん雪) であることがほとんどです。ここでは
六角形の雪の結晶の中でも、とりわけきれいな 「樹枝状六花」 といわれるもの
に「尾翼下反角型」 を応用してみました。もちろん飛びます。( 写真左上はフキ
ノトウです。)


meve
     30年近く前に作成した機体 1 「中学生の頃に設計した競技用機」
  中学生の頃に設計した 「チャレンジャー・コンドル」 の改良型です。すべて直線で
構成された翼は二段上反角です。翼端上反角部は吉田辰男先生の 「サーマル・キャッ
チャー」 の主翼中央部の取り付け法を応用して3面キャンバーを確保しました。揚力の
増加効果よりも強度の面で優れていると思います。上昇が良く何度か紛失しましたが、
そのたびに奇跡的に回収することができ、現在に至っています。


meve
     30年近く前に作成した機体 2 「中学生の頃に設計した競技用機」
 中学生の頃に設計した機体は数多くありますが、奇抜な形のデザインが多かったせいか
今から見ると思わず赤面してしまうようなものばかりです。 これもそのうちに入るでしょう。
沈下速度は小さくてよいのですが、上昇はあまりよくありませんでした。上昇についての実
際的な調整法を知ったのはもっと後になった大学生の頃でした。



meve
     30年近く前に作成した機体 3 「高校生の頃に設計した競技用機」
 二宮康明先生の二段上反角つき競技用機の設計図展開法を使用した楕円翼の競技用
機です。翼端部はやや薄手の赤色ケント紙2枚で翼端上反角部ののりしろを挟んで隠しま
す。水平尾翼は胴体の下側で主翼との高低差を設け、主翼で生じた気流の乱れが水平尾
翼に当たらないようにしています。さらに下反角を付けて重心を下げるようにしています。私
の競技用機のこのスタイルは高校生の時代に確立されていたようです。上昇の頂点での
「返り」が非常に良く、好タイムを頻繁に出しました。( dead air 性能 30秒以上 )


meve
     30年近く前に作成した機体 4 「高校生の頃に設計した競技用機」
 上の機体と同時期に設計した機体です。全く同じ手法で作成していますが、翼面積
が上の機体に比べて大きめに取ってあります。垂直上昇パターンではありませんが、
大きな弧を描いての半宙返りの頂点で横から反転して高度を落とさずに滑空に入り
ます。( dead air 性能 30秒以上 )



meve
     30年近く前に作成した機体 5 「大学生の頃に設計した競技用機」
 白一色の翼端上反角型滞空競技用機です。やはり水平尾翼は胴体の下側で下反角
つきです。私の設計した競技用機の中では最も美しく性能のよいものです。神話に出て
くる女神の名を冠していたように記憶していますが、忘れてしまいました。胴体の曲線
がきれいなのでフックを付けることに抵抗があり、もっぱらハンドランチ用として使用
しています。滑空は非常に滑らかです。


meve
     30年近く前に作成した機体 6 「二宮康明氏 競技用機 N348」
 子供の科学誌1977年7月号に発表された機体です。「だえん翼の競技用機」 と
なっています。翼のだえんの曲線の美しさももさることながら、それ以上にこの
胴体プロフィールの美しさが映える機体です。武蔵野中央公園でこの機体を飛ば
していると、二宮先生がニコニコしながら寄ってきて細かい調整方法を教えて下
さいました。本で知識を得るのとフィールドでの実際とでは技術の収穫が違います。
その2、3日後にこのN348の改良版など数機の設計図を送って下さいました。


meve
     30年近く前に作成した機体 7 「吉田辰男氏 K8210」
 子供の科学誌1982年10月号に発表された 「先後尾翼型滞空競技用機 K8210」
です。紙飛行機愛好家の方々のホームページを見ると、わりとこの3枚翼型は人気
があって、皆さんが試作なさっているようです。吉田先生の競技用とする機体は多様
で、私は、その理論や型にとらわれない飛行性能の追求姿勢が好きでした。この機体
をはじめ、先尾翼型競技用機、無尾翼型競技用機、双胴競技用機、「はるかぜU」 の
ような低翼のものなどがありますので、機会がありましたら追って御紹介致します。


meve
      30年近く前に作成した機体 8  「White angel」
 吉田辰男先生独特の美しい曲線を持った競技用機です。子供の科学誌1976年2月号
に 「高性能ペーパーハンドランチグライダー ホワイト・エンゼル」として発表されました。
ところで、本機を始め、チャレンジャーA、スカイダック、スカイフレンド、スーパーフライ
ングフィッシュ、K828、K8212、「銀河」 など吉田先生の競技用機には後部胴体を
下方に突出させているものが多く見受けられます。本人に聞いたところ 「胴体やフック
などで生じた乱流を整流に戻して水平尾翼に当たるようにするため」 だそうです。


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